車検証の電子化

2023年から車検証が電子化される。今まで記載されてきた所有者・使用者の情報は記載されず備考欄に使用者の氏名又は名称だけが表示される。それらの情報は車検証に内蔵されたICチップ記録され、車検証閲覧アプリで確認することになる。

一般ユーザーから見て電子車検証が変わるところは大きさがA4からA6に小さくなり、所有者・使用者の情報は書面には表示されないので、専用アプリで確認することになる。

一般ユーザーにとって車検証は車検や修理、買い替え時の下取りなどの時にグローボックスから出してきて整備工場や自動車販売店に提示ずる以外ほとんど見ることはないので車検証のサイズが小さくなっただけの感覚しかないだろう。その他には一般ユーザーにとってあまりメリットはなさそうだ。

強いて言えばICに記録された情報の一部を車検場に出頭することなく、指定整備工場(民間車検場)、行政書士、その他委託された業者(自動車販売店など)でも変更できるので、車検場が自宅から離れたところにある場合などは近くの委託業者で出来るようになるので便利になることもありそうだ。

その委託業者で出来ることの一つに指定整備工場で継続検査をした場合があり、その工場が車検証の検査有効期間の更新を行うので車検場へ出頭せず継続検車が完する。指定整備工場が車検場に出頭するかしないかは一般ユーザーには関係ないので、車検場での業務の一部が民間に委託されただけでしかない。

その他行政書士などの委託業者で出来ることには変更登録と移転登録がある。変更登録は住所の変更があるが書面記載の変更が伴わない場合とあるので、所有者が支局管轄区域内で引越した場合など限定的であり、あまり多くないケースのように思われる。備考欄に使用者の氏名又は名称と記載されている事と所有者を変更することは所有権の移転になるため、所有者の住所に限定することになる。

移転登録も同様に券面記載事項の変更を伴わない場合と限定的であり、実際にはローンの支払いが完了した後の所有権解除(所有権留保の解除)がほとんどのケースになると思われる。全くの第三者に所有権を移転させる移転登録も将来は検討されるかもしれないが、必須条件としてマイナンバーカードの取得などが出てくるだろうから簡単には進んでいかないように思う。

車検証の電子化に限らず個人の持つ全ての情報を報を電子記録として一つに集約してそれに国民総背番号制(マイナンバー)を付与して管理すれば役所においての申請は簡素化され、申請をするための出頭せずに済むが、国が個人の情報を全て持つことには抵抗感を持つ人が未だに多いようだ。情報の漏洩と管理のずさんさは企業に限らず役所でも過去に多くの例があったが、いつも誰の責任を問われずその問題がそのままに放置されてきた。電子化は便利と引き換えに大きな危険が隣り合わせになっているようだ。

紙にICチップ埋め込んだ車検証の電子化でどれだけの利便性があるのだろうか? 紙の車検証であればそこに全ての情報が表示されているので、車検証を見ながら所有者の情報など登録に必要な項目の確認や登録書類作成後の確認が容易に出来たが、電子車検証ではこういう情報は表示されていない。そもそも所有者の情報ををわざわざ非表示にしてICカードリーダーやネットで確認しなければならないことそのものは面倒でしかない。また、業者はICカードリーダーを購入しなければ所有者の情報を見ることができない。今のところ、民間車検場(指定整備)は車検場に出向くことなく継続車検の業務を完了させることができるので、その他では余計な作業が増えただけになりそうだ。

そもそも車検証は国土交通省のデータベースに登録されている車両情報とその車両の所有者・使用者などの情報を表示している紙にすぎない。車検証と自動車を盗まれたとしても所有者の印鑑証明や実印が無ければ所有権の移転は出来ず転売は出来ない。車検証を改ざんしたとしても国交省のデータベースまで書き換えることは出来ない。所有者の情報を隠すことにどれだけの意味があるのだろうか?クレジットカードやETCカードなどのように電子情報を保存している媒体に何らかの決済機能などの効力持たせるのであれば意味はあるが、情報だけを表示しているだけの紙を電子化することに意味はあるのか? 車検証を電子化するための目的として無理にそうしているようにしか見えない。

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