オートオークションとインボイス制度
2023年(令和5年)10月1日から適格請求書等保存方式(インボイス制度)施行される為、オートオークションで継続して取引を行うためには適格請求書発行事業者登録番号(インボイス登録番号)のオートオークション会場への通知が必須となります。
販売店舗を持ち自動車の販売を主としている事業者では通常、年間の売り上げが1000万円超えるため、消費税の納税義務がない(免税店)となっているケースはほとんどないと思われるので、適格請求書発行事業者登録番号を申請取得する事での問題は特に無いように思われます。
その他のケースでは個人でオートオークションの会員登録をし副業的に細々と中古車の販売を行っている個人事業者もいるようです。こういう場合の事業者の形態は様々あるようで、例えば車検代行に加えて注文が有った時にだけオートオークションから仕入れて販売する、またはオートオークションの落札代行料として手数料を徴収するケースなどがあるようです。その他、個人でオートオークションから仕入れて中古車の輸出を行っている場合などもあります。また、個人事業主では各オートオークションの個別に入会せずに各オートオークションと事業者を仲介するアイオークのようなオートオークションの仲介業者を利用しているケースも多いのではと思われます。いずれの場合もインボイス番号の通知をオートオークションへ行わないと2023年10月以降のオートオークションには参加できなくなります。
これまでは免税店であるかないかは事業者と税務署の問題でしかなかったのですが、適格請求書等保存方式では免税業者を無くしてほとんど全ての事業者に消費税を納税させるためのものであり、個人で副業的に中古車の販売を営む年間の売上高が1000万円に満たない個人事業主も消費税を納めなくてはなりません。これまでは年間に低価格の中古車を数台程度販売しているケースやオートオークションの代行手数料だけを売り上げとしている場合には年間で1000万円を超えるケースなどでは免税店として消費税の納税をする事はなかったようですが、2023年10月からはオートオークションを利用している事業者は例外なく消費税の納税義務を負うことになります。
個人事業主では簡易課税制度を選択することで消費税の納税額を少なくすることが出来ます。小売りでは80%をみなし仕入れとし、オートオークションで販売した場合は卸売として90%をみなし仕入れとして粗利の計算をする事で納税額を少なくすることが出来ますが、今までは免税だったことを考えれば負担増になることに変わりはありません。
オートオークション事業者としてのインボイス制度は、オートオークションは会員同士の取引を仲介するものであり、会員同士の直接取引ではないため、会員がオートオークションへインボイス番号を通知し、会員が消費税の納税業者であることを把握することで仲介者交付特例によりオートオークション計算書がインボイスと認められることになります。
いずれにしても今回の適格請求書等保存方式(インボイス制度)は年間売り上げ1000万円以下の小規模で事業を営む免税業者を無くして、ほとんど全ての事業者に消費税を納税させることになります。本人の意向ではなく社員から個人事業主(フリーランスや一人親方など)にさせられている人々の多くは売り上げが1000万円どころか300万円以下もしくは150万円にも満たない方も多いのではないでしょうか?このような少額売り上げしかない方々の貰うお金は売り上げなので貰ったお金の中から10%を消費税として納税することになります。(ほんの少しの消費税の控除と簡易課税の選択肢はありますが)本則課税で計算すると300万の売り上げであれば約30万円、150万円であれば約15万円をの消費税を納税することになり、残るお金が各270万円、135万円となります。更に残ったお金から所得税、住民税、年金保険料、国民健康保険などの公費を支払うことになり、残ったお金から家賃や食費に水道光熱費を払ったら生活できるのでしょうか?
経営基盤の弱い中小零細業の多くではコロナ感染症以前から続く景気の低迷で消費税分を価格に転嫁することが出来ずに自己負担を強いられている赤字の企業も多くあるようです。また消費税は赤字黒字に関係なく売り上げがあれば生ずる税金であり赤字企業の経営を圧迫することになり、消費税の滞納にも繋がっているようです。このような状況が続けば中小企業の多くが倒産または廃業となっていくように思えます。
一部の大企業では40歳定年の話もあり、定年退職後は個人事業主として雇用するのではなく外注先として扱われるような話もあります。このようなことがまん延すれば労働者のほとんどが個人事業主になり賃金は売り上げへと扱いが変わります。そうなればほとんど全ての労働者のもらうお金が消費税10%の対象となります。